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女神の在す砂庭にて・・・6

「・・・以上が僕のプランだ。
 茂子さん、君にはとても重要な役割を担ってもらう事になる。
 どうだ?出来るか?」

これからから起こる事のシュミレーションをし、夜が明けて計画を完遂するまでのプランを、
僕はマンツーマンで彼女に叩き込んだ。
全てはタイミングが命。しくじれば、二人とも無惨に犬死にする事となる。
そうかといって成功したところで、命の保証などある訳ない。
仮に狙撃されるのを免れたとしても、拘束されて刑法の内乱罪が適用されたら、
死刑か無期禁錮である。

だが、例えこの身を砕かれようと、狂乱の時代に抗って生きた証として、
男は・・・いや、男とオカマは、でっかい一発をぶちかまさなけりゃならないのだ。
その事を自身に確認するように、ゴクリと生唾を飲み込んでから茂子さんは言った。
「出来るなんて軽はずみな事は言えない。
 でも、任されたんだもの。私だって戦士の一員だもの。
 全力でやり遂げてみせるわ。」

想像を遙かに超える力強い言葉だった。
これで彼女が真っ当な女だったら、僕等の間には愛情が芽生えていたことだろう。
そのくらい感動的だった。
僕はたまらずに茂子さんの両手を握りしめた。

「よし!頼んだぞ!
 作戦最後の合い言葉は・・・”この瞬間を、未来の為に!”
 これで行こう。いいな?」
「分かったわ。”この瞬間を、オカマの為に!”、ね!」
「あのな?茂子さん。あんた耳が悪いのか?それとも頭が悪いのか?」
「バカね、冗談よ。私、悪いのは性格とベッドマナーだけだわ。」
「じゅうぶんだ。じゃあ、行くぜ!」

そう言って行動を起こそうとした時に、けたたましい騒音が夜明け前の街に轟いた。
僕は縛り上げてある警視庁の捜査員達を飛び越えて、階上にあがり外の様子をうかがった。
道玄坂の方を物陰からのぞくと、陸上自衛隊の軽装甲車両の隊列が見えた。
拡声器がけたたましくわめく。

『反逆者・きゅびに告ぐ!
 東京23区内は現在戒厳令下にある!
 渋谷円山町周辺は全て装甲車両によって完全に封鎖した!
 この近辺に潜んでいるのは分かっているのだ!
 直ちに抵抗をやめて、人質を解放し、おとなしく投降しなさい!
 従う意志がみられぬ場合は、夜明けと共に自衛隊航空機により一帯の空爆を開始する!

 繰り返し反逆者・きゅびに告ぐ!
 東京23区内は現在・・・・』

もう、何もかも滅茶苦茶だと思った。
計画を、今すぐに行動に移す必要があった。
僕は階下に戻り、茂子さんに伝えた。

「大変だ!夜明けには、一帯を空爆すると防衛庁の奴らは言っている!
 渋谷を火の海にするつもりだ!」
「バ、バカな!きゅびさんどうするの?!」
「こうなったらしかたがない。
 予定とちょっと違うけど、今からここを飛び出して、連中を引きつけておく。
 だから、茂子さんはこいつを頼む!」

僕はこの世で最後の一本となったエロDVDを茂子さんに手渡した。
「分かったわ。
 ・・・ねぇ!きゅびさん、ちょっと待って!!」
「どうした?」
「上手くいくかどうか保証は出来ないけど、私に名案があるの!
 これ、私の勝負服なんだけど、お願いだからこれに着替えていって!」
そう言って彼女が僕に渡したのは、裾に胡蝶蘭の刺繍が施された純白のチャイナドレスだった。
「・・・・・。」

僕はためらったが、茂子さんの目は真剣そのものだった。
「胡蝶蘭は多くの幸せを呼び込むと言うわ。
 それに、それに・・・・。花言葉は・・・・。」
「分かった、分かった。君を信じよう。
 この瞬間も、何もかも、全ては・・・」
「全ては、未来の為に!!」

こうして反逆者たる僕等は、何故か二人でお揃いのチャイナドレスを身にまとう事となった。
純白の衣装に身を包んだ戦士二人が、ろうそくの灯火が揺れる地下の廃墟で、
瞳に反逆と情熱の炎をバホバホ燃やしながら、互いを固く抱擁し再会を約束しあったその頃、
運命の夜明けに向けて東の空は徐々に明るさを増してゆくのだった。

                      なんてドラマチック!手に汗握るラストはもうすぐそこに!
                      愛と希望と情熱と無駄が織りなすSFアクション進行中!!
                      で、つづくなワケだ
Commented by 高摂。 at 2008-05-31 01:43 x
小学生の頃、第一次野球ブームが到来したとき(私の中で)、
数々の苦難を乗り越えて、好きな選手のサイン入り色紙を手に入れる(やはり命がけ)話を書いたことがあります。

ふと、懐かしい気分になったのは、そのせいかもしれません……
Commented by ぷりん at 2008-05-31 01:55 x
これ、超~面白いわ!もはや、モノがエロDVDでも何でもよくなってきた。
もうすぐ終わっちゃうの?もうちょっと膨らませてみない?
茂子さんも、どんどんカッコ良くなってってるし、きゅびさんも…それなりに(^^)。。
今日、リアルに渋谷に行きましたよ。無意識に茂子さんを探している自分に恐怖を感じました(^^;)。
そして…本物の女性なのに、なぜか茂子さんに見える人がチラホラと…
久々に見た渋谷の夕方は出勤系の人とマルキュー系の人とリーマン系の人なんかで賑わってインターナショナルな感じでした。
Commented by きゅび at 2008-06-01 00:04 x
■高摂。さん
 やはり幼少の頃から書き記すと言う行為に馴染んでいたんですね^^
 物事を切り取る能力、伝える心意気、そして書ききる能力。
 高摂。さんのブログはこのくそったれクルルにあって、
 一服の清涼飲料水のような、そんな明らかに特異な存在ですよ^^
 ・・・これ、コメントに返事になってないな(ノД`)
■ぷりんさん
 お話自体はもう少し続きますので、ご安心を^^;
 ご批判を集めているエロDVDという点に関しても、僕だけは「ひひひ」と
 ほくそ笑んでますよ^^;; ああっ、早くクライマックスを発表したい!!
 まぁ最終的には、多くの方の現時点で抱いている予想を
 完膚無きまでに裏切ります(。-∀-)ニヒ♪
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by hinemosunorari | 2008-05-31 01:34 | 日々のよしなしごと | Comments(3)

洒落と知性と愛そして無駄の織りなすブルース。


by きゅび
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