間が悪い。(1)

「間」というものがある。
「あいだ」や「けん」と読んではならない。
「ま」である。
これはもともと、演劇や邦楽や舞踊などで使われている言葉だ。
そう、言ってみれば舞台用語なのである。

「間」とは何か?
これは一概に説明は出来ない。
あるときは空間であるし、あるときは時間であるし、あるときはタイミングでもある。
非常にルーズな定義ではあるのだが、演劇にせよ舞踊にせよ
いまだにこの「間」というものは、しっかりと存在していて消滅していない。
何故か?
これは非常に興味深い話だと思う。

以下述べることは、きゅびの独断であるので、
間違っても飲み屋等で、友人たちに誇らしげに語ってはならない。
そう、あなたの信用が地に落ちない為にも。

さて、わが国の芸能には、特筆すべき点がある。
これは、歌舞伎・能・狂言・日本舞踊・落語・漫才・その他広義での演劇全てにおいて、
台本や手本などが存在するものの多くには、ほぼ間違えなく「間」の表記がある。
たとえば・・・

男 「・・・さて、と。
    そろそろ、その悲しげな瞳のわけを、ひとつ教えちゃくれないか?」
女 「え?」
男 「お前さんとの付き合いはもう随分長くなるが、
   いつからか毎年決まって七夕の夜は、
   こうして屋根の上から星空を眺めてるじゃねぇか。
   それも、悲しそうな目をしてな。
   (見つめあい、そして目を伏せる女。やや「間」あって)
   水くせぇぞ。幼馴染なんだ。
   お前の苦しみを解決してやる事は出来ないかもしれないけど、
   話しちまえば楽になることだってあるんだぜ。」

                 ・・・DINING BAR CUBIC・屋根の上の女神より

という感じである。
幸いこのブログに足をお運びの方は、皆様日本語が堪能でらっしゃるので、
ここで言う「間」は、ただの「台詞を言わぬ数秒間」という意味ではない事は、
既にお察しの通り。
けれども実際外国の台本等だと、そこには「○秒の沈黙」なんて書かれている。

時間を厳密に指定しての沈黙。
片や、すごくアバウトな「間」。
実は、この差こそがとても大きいと思うのである。

日本の文化とは概ね「調和」を重んじる文化だといって、過言ではないと思う。
周囲との垣根を極力引き下げ、その空間に馴染みながらも、
独自の世界観や様式美・機能美に磨きをかけながら育ってきた。
存在するものは「自分」だけではない。
そう。「相手」がいる事を、常に意識しながら育った文化なのだ。

少々話が大きくなりすぎた感があるので、「間」の話に戻そう。
上に引き合いに出した、DINING BAR CUBICは、ご存知の通り芝居台本ではない。
けれども、ストーリー仕立てなので台本風に書き換えてみた。

ここで言う「間」。
男が次の台詞を口に出すまでの時間的な「間」。
それは、1秒かもしれないし、3秒かもしれないし、5秒かもしれないのである。
その「間」の間に、男は続く台詞を言うために更に感情を昂ぶらせるし、
女は男を値踏みしたり、過去を告白する決心をしたり、戸惑ったりするし、
お客さんは(もしいたとしたら)何だか分からないけど、
固唾を呑んでハラハラと緊張したりするのである。

台詞を間違えないのが、優れた役者なのではない。
台詞を自分の中に一度入れた上で、全てを白紙にしても台本どおりに立ち居振舞える。
それが「役に入る」と言う事であり、その技量の優れた人を良い役者という。
そして、良い役者は台詞以上に「間」で芝居が出来るのである。

そう考えると「間」とは次の状況へ進むために、自分・相手・環境の全てにとって、
重要かつ必要な時間的・空間的空白だと言えよう。
故に、周囲にそういう大切な「間」を与えないで、
自分の台詞ばかりを考えて、どんどん芝居を先に進めてしまう奴を
「間が悪い奴」とか「間抜け」と呼んだりするのである。

さて、異常に前置きが長くなったが、今日壮絶に「間が悪い」奴を目の当たりにした。
ここまで人の事を考えずに自分勝手で大迷惑な奴は、そう簡単にお目にかかれない。
誰かって?
名前は無い。人じゃないから。
ただ、通常そいつは「地震」って呼ばれている。

今日きゅびがこうむった「地震」による大迷惑は、次回述べようと思う。
なんとも間のびした話で、申し訳ない。






」」」」」当時のコメント」」」」」

osakaken 子供さんがおられるので・・大変だったろうなと考えていました。
日本の間・・ですが・・言葉を補うという役割も外国よりも多いような気がします。想像する時間・・とでもいいましょうか・・。
2005/07/24 08:39

アルピニア 一体何が・・・???
気になるというか・・心配ですね。。
2005/07/24 09:53

☆ふーが 私が、やっている音楽も「間」というのは、とても重要です。呼吸といった方が良いかもしれませんが・・・休符も音楽・・・だと思っています。ただ・・お休みではなく、音は発音しませんが、そこに気持ちがないわけではない。。。
「地震」・・・心配です。
2005/07/24 10:59

はむねこさん 間の間に色々と妄想するのが好きです(・公・)♪
2005/07/24 20:35

m⇔k カキコが出来るという事はみなさん無事なのね?ホッ(*-д-)=3
で、『間』ですが 一歩間違えるととんでもない事態を招く事もございます。お気をつけあそばせ…。たかが『間』 されど『間』です。
2005/07/24 22:48

きゅび ■osakakenさん
 そうですね。日本独特の表記です^^
■アルピニアさん
 いえ、心配には及びませんが、厄介な地震でした><
■ふーがさん
 フーガさんのところは地震大丈夫でしたか?
 「休符」も音楽。。。まさに、そこに通ずるものがあります^^
■はむねこさん
 それこそ、演出が意図する「間」なのかもしれません^^
■m⇔kさん
 それは・・・ギャグを発するタイミングに関してでしょうか?
 厳しいオーラが東京までひしひしと伝わってきます。
2005/07/25 22:03

m⇔k (-ε-)b" チッチッチッ ギャグと言う所から間違っていますな。
『ボケ&ツッコミ』の事だす!ボケるタイミング、ツッコム速さ、それには『間』というのはとても重要なのよん。(藻゚Д゚)y─┛
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by hinemosunorari | 2005-07-24 00:51 | 日々のよしなしごと | Comments(0)

洒落と知性と愛そして無駄の織りなすブルース。


by きゅび
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