DINING BAR CUBIC PART 3・・・屋根の上の女神(5)

順君・・・。
あたしのアドニス、順君。
あたしの声、聞こえる?

ずっと片思いだったあなたと、やっと同じクラスになれたのは、高2の時だったわね。
あなたは2年生ながらサッカー部のエースプレーヤー。
誰からも一目置かれていて、女の子からも人気の男の子だったわ。
あたしは、運動なんて全然駄目。
読書サークルに入って、いつも好きな本ばかり読んでたわよね。
目立たない、ひときわ地味な存在だったわ。

そんなあたし達、接点なんか無いと思ってた。
男のあたしが、順君にずっと想いを寄せている事なんか、誰にも相談できなかったし、
あたし自身あなたを好きでいる事に、とても罪悪感を抱いていたの。
あなたは「友達」と呼ぶ事でさえとても適わないほど、
あたしには遠い存在だったのよ。

順君。
初めて話した日のこと、覚えてる?
あたしが放課後の教室で一人で本を読んでたら、
怪我をして部活を早めに切り上げたあなたが突然入ってきたの。
大好きなあなたと、誰もいない教室で二人きりになれるなんて、
全然予想していなかったから、あたし真っ赤になって固まっちゃってたわ。

そしたら、あなたの方から話しかけてきてくれたわよね?
あなた、私が読んでいた星座の本を見て
「なんだ、鉄ちゃんも星が好きなの?俺もさ、好きなんだよ!
 うちに帰ると天体望遠鏡があってさ、夜は良く屋根の上から眺めてるんだ!」
って、あたしを真っ直ぐに見て、目をキラキラさせながら話してくれたわ。

それがきっかけで、あたしたちは良く話すようになったのよね。

それからまもなくして、峠の上まで行って夜空を眺めようって誘ってくれたのは
あなたの方からよね。
そんな遠くまでいけないよって、あたしが断ろうとしたら
「鉄ちゃん、大丈夫だよ。
 俺、実はバイクの免許とったんだ。
 今度の日曜日、二人乗りしてでかけようよ。」
って。
嬉しかった、あたし。
泣いちゃうくらい、嬉しかった。

あのね、本当のことを言うとね、親が作ってくれたって嘘ついたけど、
あのときのお弁当は、あたしが作ったの。
満天の星空の下で、あなたがお弁当を「うまいよ、これ。」って言いながら
美味しそうに食べてくれた横顔は、今でもまぶたに焼き付いているのよ。

手を伸ばせばすぐに触れられるところにあなたがいて、
耳を澄ませばあなたの鼓動が聞こえるような静かな場所で、
大好きなあなたが、好きな事に没頭している無垢な横顔を、
あたしが独り占めして見ていられる。
望遠鏡から顔を上げて、あたしの方に楽しそうに笑いかけたあなたの笑顔は、
最高だったわ。
そう。こんなに素敵なことは、この世の中に2つとないと思ったの。

今思えば、あれがあたしの幸せの絶頂だったのかもしれないわね。

順君。
七月七日、今年の七夕は天気がいいから天の川を見に行こうって言ってくれたわよね。
七夕伝説に関係する星たちを、二人でまた見に行こうよって。
あたし、天にも上る気持ちだったわ。
そして、もしあたしに勇気が少しでも湧いたら・・・
天の川を渡って牽牛に会いに行く織姫の、強い愛情が少しでも背中を押してくれたら、
あたし、自分の正直な気持ちをあなたに打ち明けるつもりだったのよ。
例え、嫌われてしまう事になるかもしれなくても、ね。

でも、それはかなわなかったわ。
アルバイトで遅くなって、待ち合わせの場所にバイクで急ぐ途中で、
あなたは事故に遭ってしまった。

まさか、あの優しい横顔を二度と見れなくなるなんて、誰が予想できるっていうの?

順君。
あたしの声、聞こえる?
あたし、苦しかったわ。
あんな約束、するんじゃなかった。

あなたを心の底から大好きだった事に、偽りは無いわ。
ただ、他の女みたいに、あなたを手に入れたかったわけじゃないのよ。
でも結果的にあたしと約束したばっかりに、あなたはいなくなってしまった。
あたしは・・・・あたしは・・・・。

あたしは、知ってほしかったのよ。
あたしは、見てほしかったのよ。
この世に一人しかいない、ありのままの本当のこのあたしを。
認めてほしかったの。
例え嫌われる事になっても、大好きで大好きでしょうがないあなたに、
男とか女とか関係なく、一人の人間としてのあたしの存在を認めてほしかったの。
一人の人を愛する事に、真っ直ぐに向き合うあたしの存在を・・・。

・・・ねぇ、順君。
あたし、男としての道は踏み外しちゃったけれど、
人として自分の純粋な気持ちに正直に生きているつもりよ。
男には男の、女には女の、生きていく道がそれぞれあるように、
オカマにはオカマの人生があるのよ。
だから、人前で涙は流さないわ。
化粧が崩れるからじゃなくて、オカマのプライドよ。

ただね、一年に一度だけ。
七月七日のこの夜だけは、こうしてあなたに甘えさせて。
ねぇ、順君。
あたしの声、聞いてくれてる?

                                      つづく









」」」」」当時のコメント」」」」」

アルピニア 鉄ちゃんたら。。(j o j) ウルルルル
てか、この話、ホントはきゅびさんがモデルでは???
2005/06/12 20:17

osakaken 今日は・・一段と引き込まれました・・私はピーコさんが大好きなんです・・優しくて純粋な人だと思うのですが。男女関係無く・・人は人を好きになる・・ありえることだし・・当然のことでしょうね。
2005/06/12 23:00

はむねこさん ぁぁ・・・やっぱり男性だったんだ・・・(過去に縛られ続ける男)
・・・
性別を通り越して惚れてしまいそうな人っていますよね^^
2005/06/12 23:18

きゅび ■アルピニアさん
 ( ゚∀゚)・∵. ブハッ!! こんな話を書いておいて、何なんですが、
 自分がオカマの道を歩むくらいなら、キントレのし過ぎで
 死んだ方がマシです。
■osakakenさん
 なるほど。ピーコさんかぁ・・・。
 イメージしてる人物像はもうちょっと若くて、まだピーコさんほど
 達観していない悩みだらけのオカマでした^^;
■はむねこさん
 うん、そうですね。
 はむねこさん、惚れられないように注意してください^^
2005/06/14 02:21

m⇔k (★-`ω´-)ンー鉄ちゃん いい女やでぇ~!
そこいらの女より よっぽどええ女や…
2005/06/14 21:05

きゅび m⇔kさんには、かないません^^;
2005/06/16 08:23
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by hinemosunorari | 2005-06-12 19:54 | 日々のよしなしごと | Comments(0)

洒落と知性と愛そして無駄の織りなすブルース。


by きゅび
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