人気ブログランキング | 話題のタグを見る

DINING BAR CUBIC PART2

DINING BAR CUBIC PART2_b0182613_22302194.jpg

殺伐としたシティーライフに、ある種の倦怠感を覚えた人たちがどこからともなく集う、
そんな都会のオアシスのような小さな店。「DINING BAR CUBIC」。
男性客にはとりわけ愛想もクソもない店長のもとに、
今夜はどうやら、一人の女性のお客さんがやってきたようです。
どうです?ちょっと、一緒に覗いてみましょうか。

日々の生活にくだびれてしまったうら若き独身女性客(あまりに長いので、以下「女性客」) 
     「はぁ~、やりがいのある仕事って言うのはいいことなんだけど、
      デートの約束もろくに出来ないくらい忙しいって言うのは、考え物よね。
      こうも忙しいと、果たして本当に自ら望んでこの仕事についたのか、
      自分でも分からなくなってきたわ。あたしこの先やっていけるかなぁ・・・。

      あら?こんなところに、小じゃれた店がオープンしてるわ♪
      雰囲気良さそうだし、お給料も入ったばっかりだし、
      たまには一人で飲むってのもいいわよね?
      偶然、イケメンとの運命的出会いとかあったりして!
      よし、決めた。この店に入るわ!

      こんばんはー、一人なんですけれど、、、ここ、空いてます?」
店長  「こんばんわ。
      暮らしに疲れたあなたの心に、そっと寄り添い優しく癒す
      そんなダンディー且つスマートなイケメン店長こと、きゅびでございます。
      今夜はようこそお越しくださいました。
      ささ、そんな風の吹き込むところにすわらずに、奥の特別席へどうぞ。」
女性客 「あらま、随分親切なお店なんですね?」
店長  「はい、もちろんでございます。
      当店は真心第一。
      親切、丁寧、愛情あふれるサービスの提供をモットーとしておりますので。
      さぁ、この花束をどうぞ受け取ってください。」
女性客 「え?これを、私にくれるんですか?」
店長  「ええ。毎日最初にやってきてくださったお客様へ、店長の私から心ばかりのプレゼントです。」
女性客 「へぇ。何か唐突な感じもするけど、でも悪い気はしないわ。
      じゃ、お言葉に甘えて、これ頂きますね♪」
店長  「どうぞどうぞ。 あ、お客様。上着の肩にホコリが・・・。

      ・・・ほら、ご安心ください。もう、取れましたよ。
      さ、どうぞお掛けください。」
女性客 「あら、ありがとう。
      ふふふ♪ 何だか、とても居心地がいいです。まるで初めてじゃないみたい。
      そうだ。飲み物、何かもらおうかな? ビールにしようかしら?」
店長  「ビールですね?かしこまりました。
      ・・・・どうぞ。」
女性客 「どうも。いただきまーす。
      ・・・・・・・・・
      あら、すっきりしていて美味しいわね。飲みやすいわ。」
店長  「ロッキー山脈の天然水でつくられたクアーズというアメリカのビールにトニックを加えて、
      仕上げにイタリア産の新鮮な生レモンをピールしました。
      うちの店、初夏の夕ぐれ時には、こんな一杯を皆様にお勧めしております。
      さ、これもどうぞ。」
女性客 「まぁ、これ何かしら? 」
店長  「チャームとして差し上げております。
      イチジクのドライフルーツです。どうですか?」
女性客 「うん。甘酸っぱくて、でも飽きない感じ。
      これ、いけるわ♪」
店長  「宜しければまだございますから、いつでもお申し付けくださいね。」
女性客 「ありがとう!      
      ねぇ、店長さん。私、はじめて来たんだけど・・・このお店、素敵ね。」
店長  「いえいえ、うちの店はたいした店じゃないですよ。
      でも、そこにあなたのような美しい女性がスツールに一人腰をおろすだけで、
      こんなにも雰囲気のすばらしい店にがらりと変わるのですね。  
      僕の方こそ、素敵なお客様にめぐり会えて、とても嬉しいです。」
女性客 「あはは。店長さんってば、うまいこと言うのね。ありがとう。」
店長  「いやぁ、人間は綺麗なものの前では正直になってしまいますね。ははは。
      なんだか、今日はすごく良い日だなぁ!あなたと二人でずっとお話していたいくらい!
      そうだ!開店したばっかりだけど、もう看板しまっちゃおう! ははは。」
女性客 「何言っちゃってるんですか、もうっ。ふふふ♪」

      (と、その時「バタン」ドアを勢いよくあけて入ってくる一人の新しい客。)

男性客 「こんばんわ!
      自分はお客であります。
      今夜はこのお店でお酒を飲ませていただきたく、昨日に続いてやってまいりました!
      店長、昨日は声を荒げてすみませんでした。
      どうぞ、今夜もよろしくお願い致します!」
店長  「げっ。お前は昨日の!
      こほん。い・・・いらっしゃいませ。
      目の前の入り口正面のお席が空いております。」
女性客 「?」
店長  「い、いいえ。ご心配には及びません。
      あちらのお客様は、ちょっと心配な事がございますゆえ、
      しばし向こうで接客してまいります。
      何か御用がございましたら、お気軽にこの店長を呼んでくださいませ。」

男性客 「店長、昨日僕は家に帰って気がついたんです。      
      ああして、初めての客でもスキンシップを大切にして
      温かく接してくれる店なんか、東京のどこを探したって無いんじゃないかって。
      そうしたら、とたんに店長にまた会いたくなって・・・。」
店長  「何言ってんだ。お前、ホモじゃねぇだろうな?
      おめぇは場の空気を察するってことが出来ねぇのか?      
      あからさまに二人でいいムードになってんのに、
      何でアホみたいに大声出しながらはいってくんだ? あ?」
男性客 「いてっ!
      店長、バーカウンターの下から蹴りを叩き込むなんて、さすがです。
      とりあえず、ビール下さい。」
店長  「黙れ、マゾ野郎。
      いいか、2度はいわねぇからよく聞け。
      スーパードライ一杯飲んだら、金置いてすぐに家に帰れ。
      分かったな?」
男性客 「店長、どうしてゴニョゴニョ小声で話すんですか?
      顔つきは怒ってるみたいだし・・・。
      おっしゃってる事も、よく聞こえませんが。」
店長  「つべこべ言わねえで、今ビール出すからそれを飲んだらすぐに帰れってーの。」
男性客 「いてててててて。
      店長、さっきからアイスピックが何度か僕の膝に刺さってるんですけれど。」

女性客 「あの・・・すみません。」
店長  「はい、何でございましょうか?」
女性客 「あちらの方、常連さんでいらっしゃいますか?
      何だか私、お邪魔してるかしら?」
店長  「ま、まさか!
      とんでもございません。
      奴はおかしなことを言っていますが、僕はあんな男、見たこともございません。」
女性客 「そうですか。
      あ、じゃあ、3人で飲みましょうか?
      なんか、席が離れていたら店長さんも大変でしょう?」
店長  「ぎくっ!
      あ、いや。それには及びません。
      何でも彼の家が今火事で燃えていて、すぐに帰らなければならないといっていましたから。
      ビール一杯飲んだら、すぐに帰宅するそうです。はい。」
女性客 「か、火事ですって?!
      大変じゃないですか!今すぐに帰らないと!」
店長  「あ!お客様、どうぞ心配なさらないで下さい。
      ええと、彼の家はどうも消防署の向かいらしくて、心配要らないといってました。
      それに、構造上あらかじめ燃えやすい造りになっているとも言っていました。
      そ、そう。だから、月に何度かよく火事になってるらしいですよ。
      よくある事なんですって。ははは・・・。」
女性客 「いや、そんな事言ったって・・・」
店長  「当事者がそういっているのですから、大丈夫でしょう。
      さて、僕は彼にビールを届けてきます。ちょっとお待ちくださいませ。」

店長  「あー、お待たせいたしました。お客様。
      こちら、わたくしお勧めのビールでございます。どうぞ。」
男性客 「待ってました!店長。
      一杯目はスーパードライで「キレ」を楽しむのですよね?
      じゃ、いただきまーす!
      ・・・あれ?店長、これ何か入ってますよ?」
店長  「辛口スーパードライをベースにした、ビアカクテルでございます。」
男性客 「何か、浮いているようですけど?」
店長  「お通しで出すつもりだった「柿の種」、面倒くさいので一緒に入れておきました。」
男性客 「何か、色合いもちょっと変に見えますけど?」
店長  「こんなカラーバリエーションも、スーパードライにはあるのです。」
男性客 「あ、でもほのかにレモンの香りがしますね?」      
店長  「いいから、とっとと飲め。バカヤロウ。」
男性客 「ゴクゴクゴクゴクゴク。
      うっ・・・・・・・・・。
      て、店長、このビールの説明を・・・。」
店長  「ふふふ。ガッツリ飲んでしまったようだね?
      秘密を明かそう。
      辛口スーパードライを本当に辛くするために、ハバネロソースを追加。
      ビールの泡立ちをよくするため&香り付けにライオン社「ママレモン」を小さじ一杯。
      そう。お前はもう、死んでいる。」
男性客 「うっ・・・・。て、店長・・・・。
      がくっ。」

女性客 「あ!店長さん、この方白目を剥いて倒れちゃいましたけど?」
店長  「余程、家が燃えたのが悲しいのでしょう。なーに、放って置いても大丈夫です。
      ショックで気絶しているなら、じきに目覚めますし、
      悲しみのあまり死んでいるなら、手遅れですから。」
女性客 「大変。口から泡を吹いているわ。」
店長  「ああ、それでしたら泡も泡。本物のシャボンです。
      あ、いいえ、こちらの話です。
      先ほど聞いたところでは、彼、カニの踊り食いが大好物だったそうです。
      きっと、胃の中のかにが泡を吹いているのでしょう。
      さぁ、そんな事より僕たち二人の素晴らしい出会いに乾杯しましょう。
      ささ、お席に戻って・・・。」
女性客 「いいえ。店長さん、そんな事は出来ません。
      私、実は医療従事者なのです。
      日々の仕事に疲れて、自分のやりたい事を見失っていましたが・・・
      それでもやはり、目の前で人が倒れているのを黙ってみている訳にはいきません。
      幸い、私が勤務する病院はすぐ近くです。
      彼を病院に搬送するの、手伝っていただけますね?」
店長  「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

殺伐としたシティーライフに疲れた人たちが、どこからとも無く集う不思議な店、DINING BAR CUBIC。
そこでもまた、数々のドラマが生まれては、消えてゆきます。
その後、入院中の男性客を熱心に看病した女性客は、ナースとしてのやる気を取り戻した上に
今回の件が縁で二人に恋が芽生えたとか芽生えないとか。
なんとも、羨ましいお話でありますな。
一方の店長はといえば、その強引な商売が元で地元のヤクザに目をつけられ、袋叩きにあった挙句
こちらも入院を余儀なくされたとか、されなかったとか・・・・。
いずれにしても、これでDINING BAR CUBICは事実上の閉店状態。
ようやく、きゅびがお勧めするお酒の紹介が出来るってモンです。
アルピニアさん、待ちくたびれて怒ってないですか?





」」」」」当時のコメント」」」」」

戌年セブン おもろいっすね!!これきゅびさんが書き下ろしているんですか?
2005/05/30 02:17

アストラッド (´▽`*)アハハ  すごく面白かった!注目のシリーズになりそう^^
2005/05/30 02:22

osakaken クルクルでも開店してくださいね・・飲みに行きたい~・・イケメン店長・・!
2005/05/30 05:05

アルピニア あははww 怒るどころか楽しませてもらいましたーー♪
続きのお話はないのかしら?? (* ̄m ̄)ぷぷっ
2005/05/30 08:28

きゅび
■戌年セブンさん
 ありがとうございます^^成り行きで書き始めたものの続編です^^;
■アストラッドさん
 「注目のシリーズ」・・・素敵な言葉です!ただ、あまりに内容が馬鹿馬鹿しいので
 シリーズ化するかどうかは、極めて微妙です><;
■osakakenさん
 あらま。こんなところでも開店要請が。
 もうちょっとましな話を考えたら、開店させていただきます^^;
■アルピニアさん
 ( ゚∀゚)・∵. ブッ!! もしかして、好評なのですかね?これ。
 とりあえず、次回こそはお酒紹介です^^
2005/05/30 10:55

★アクアマリン アハハ (*^▽^*) 続編も面白く読ませていただきました^^
きょびさん ほんと文才あるよね~^^
2005/05/30 15:51

はむねこさん あはは^^閉店してしまったのがとても残念ですよぉ^^;
無理強いはなんですが、宜しければまた書いてくださいな♪(* ̄公 ̄)b
2005/05/30 22:34
名前
URL
削除用パスワード
by hinemosunorari | 2005-05-30 01:18 | 日々のよしなしごと | Comments(0)

洒落と知性と愛そして無駄の織りなすブルース。


by きゅび
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31