女神の在す砂庭にて・・・13

「きゅび、無事か?
 お前が無事に、このメッセージを受け取ってくれていると信じている。」
確かにそう広さんは言った。
と言うことは、取り違えたのではない。
広さんは何らかの確固たる意志を持って、このDVDを僕に託したのだ。

「驚かせて、すまんな。
 俺なりに思うところがあって、こうさせてもらった。
 エロDVDはナシなんだ。

 なぁ、きゅび。
 ひとつ言っていいか?
 確かに俺はエロビデオが好きだ。・・・いや、どっちかっつーと大好物だ。
 男なんだ。何が悪い?
 煙草だって吸えなくなっちまったし、酒だって飲めなくなった。
 何でそんなことを政府に規制されなきゃならん?

 お前も薄々気がついていると思う。
 確かに俺はエロビデオを抱えて国に反旗を翻した。
 だけど、エロビデオはひとつの契機に過ぎん。
 俺の真意はエロビデオを存続させる事なんかじゃないんだ。
 そんなものは、人間が平和な暮らしを営んでいりゃ、どこからともなく出回ってくる。
 俺はその平和な暮らしこそを存続させたいんだ。」

少なくとも、僕が託されたDVDはエロビデオなんかじゃなかった。
広さんはカメラをしっかりと見据えたまま・・・
いや、カメラレンズの向こうにいる僕をしっかりと見据えたまま語り続けた。

「自由って何だ?きゅび。
 俺たちが愛する自由って、何だ?
 安っぽい標語とか知れきったフレーズなんていらねぇんだ。
 一人一人が自由の意味を在り方を、自分自身で判断することが、
 自由への第一歩なんじゃねぇか?

 その上で、自由を掴み取ろうぜ。
 自由を抱いて叫びを上げようぜ。
 俺たちは、自由を求めてたぎるこの血を腐らせちゃならねえんだ。
 かならず、誰かに受けてもらわなきゃ、渡さなきゃならねえんだ。

 ああ、もう時間がねぇ。
 もうすぐ連中が踏み込んで来る。
 ・・・だから、頼む。
 このディスクを・・・いや、俺の血を、
 お前に受けてもらいてえ。
 
 そして、もしもお前が倒れるときは、お前のその血を誰かに渡してやってほしい。
 そうやって時代が作られてきたように、俺たちもそうやって未来を作ろうじゃねぇか。
 次の世代に胸を張って渡せる未来を作ろうじゃねぇか。
 なぁ、きゅび。」

広さんが映像の中で、僕に向けて最高の笑顔を見せて親指を立てたとき、
突然目の前が真っ赤に染まって、一切のものが見えなくなった。
ヘリコプターから発射された催涙弾のうちの一発が、僕の額に命中したのだった。
僕は流血の激しい額を押さえつけようとしたが、腕が全く言うことを聞かず、
そのまま前のめりに倒れた。
地上の争乱が、どこか遠い国の出来事のように感じられた。

                 

                          そして、もうほんのちょっとだけつづくなワケだ。
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Commented by 大阪 ケン at 2008-06-11 20:08 x
きゅび文学を読むために 予習していたような 一日でした・・^@^
自由を掴み 生きて行く事が いかに大変であるか・・今日は 8時間も午前中から人生の先輩と話し込んでいました。先輩は70歳!30代後半にご主人を亡くし 今も仕事をしながら ボランティアなどもなさる素晴らしい人です。「誤解されそうだけどね・・自由は独り立ちできる人に 与えられるものなんだよ・・」
そんな話に盛り上がり・・コーヒーでお腹が 一杯・・!
Commented by ぷりん at 2008-06-11 20:41 x
自由・・・私は基本、自由がいっぱいある人生を送ってると思ってる(^^)。
そんな自分って「なんて幸せ者なんだろ~」って思うよ(^^)。
Commented by 高摂。 at 2008-06-12 00:10 x
きゅび文学全体に流れているダンディズムみたいなのが、はっきり見えた気がしました…
満点じゃないかっこ良さなんですよね、主役のきゅびさんも、茂子さんも、広さんも。
一つかっこいいことをするために、他の九つはかっこ悪くてもいい、みたいな潔さを感じます。
Commented by きゅび at 2008-06-12 11:54 x
■大阪ケンさん
 なんという巡り合わせ!そして素晴らしいお言葉!
 良縁は良縁をはぐくむとか言いますけれど、大阪ケンさんのまわりには
 まさに良縁が大漁節を唄ってそうです!
 それにしても、8時間もコーヒーばかりだったんですか?驚きです^^;;
■ぷりんさん
 僕たちは恵まれていますよねー^^
 恵まれていることをしっかり自覚していてるんですけど、
 そのバトンをいかに次代に渡すことが出来るかって事が、今
 回のお話のテーマなんです^^じつは。
■高摂。さん
 そう分析されて、初めて気がつきました!
 そうか!そうだったんだ!完璧だと思ってたけど、完璧じゃなかったんだ( ノД`)シクシク…
Commented by 大阪 ケン at 2008-06-12 16:37 x
途中 ランチも少し・・でも 残りは 上島コーヒーのみ。師の教えを受ける時には
アルコールなど とんでもありません~うそ・うそ・・先輩の御身体の都合です・・笑
Commented by きゅび at 2008-06-14 00:07 x
■再び、大阪ケンさん
 なるほど^^;それにしても、人生の先輩も語りに語ったりですねー。
 一日の円グラフを書くと、実に1/3ですもの。タフさには脱帽です!
Commented by 高摂。 at 2008-06-14 00:23 x
エッ!? アダルトビデオ鑑賞の自由を巡る話で完璧なダンディズムを描くおつもりだったんですか?( ノД`)シクシク…
Commented by きゅび at 2008-06-17 05:52 x
■高摂。さん
 えー!!いつも完全無欠のダンディズムを感じさせる38歳かと思っていました!
 ( ノД`)シクシク…
by hinemosunorari | 2008-06-11 18:44 | 日々のよしなしごと | Comments(8)

洒落と知性と愛そして無駄の織りなすブルース。


by きゅび
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