たった一度だけ、望んだ夢が見られるとしたら。①

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もしもたった一度だけ、望んだ夢が見られるとしたら、
僕は一体どんな夢を見たいと願うのだろうか。
その見た夢によって、自分が今日生きていることの意味が分かるとしたら・・・

**************************************************

「あっ!」
短い悲鳴を上げて、僕は真っ逆様に転落した。
「どぼん」とも「バシャ」とも何とも言えないぬかるんだ音が、
夜が明けたばかりの田んぼにこだました。

1977年の夏。
僕の両親は仲良くニューヨークへ旅行に行った。
常日頃から親の言うことをまるで聞かない悪ガキだった僕は、
当然のように国内残留を申し渡され、
母の生まれ故郷である愛媛県の田舎に預けられていた。

別にニューヨークへ行けなくても、平気だった。
当時の僕にとっては、ブロードウェーミュージカルも、
ニューヨークヤンキースも、ニューヨークニックスも、全然興味はなかった。
そんなものよりも、宿題のことなどさっぱり忘れて、魚や虫を追いかける日々の方が、
8歳の男の子には遙かに魅力的だったのだ。

愛媛の田舎は大好きだった。
海も山も渓谷もあって、川遊びも魚釣りも山菜取りも昆虫採集も、
花火もスイカの大食いも探検も、東京では出来ないことが、
ここに来れば全部一度に楽しめたから。
そして、何よりも僕をかわいがってくれる、おじいちゃんとおばあちゃんがいたから。

「おーい、きゅびか?どうした?
 朝っぱらから、なにしちょるん?」
普段は聞かぬ不審な物音がしたから、おじいちゃんが様子を見に出てきた。
「あのね、目が覚めちゃって散歩してたら蛙がいてね、
 逃げる蛙を追いかけてたら、一緒に田んぼに落ちた。」
僕は泥にまみれてもがきながら、正直に告白した。

朝っぱらから世話を焼かせてしまって、怒られると思った。
けど、石垣の上のおじいちゃんは顔をしわしわにして笑いながら、
「そうか、そうか。
 まぁ、なんも早うからそんな泥んこにならんでも良かろ。
 さ、さ、こっちに来い。」
そう言って優しい笑顔を向けると、僕が起きあがれるように手を差し伸べてくれた。

助けられ、引き上げられた僕は、自分自身を恥じた。
普段の行いが悪いから、両親にニューヨークに連れて行ってもらえなかった。
だからこそ、田舎にいる間はおじいちゃんとおばあちゃんには世話をかけまいと、
子供心に固く誓っていた。
両親が迎えに来た時に、「きゅびちゃんは、とってもよい子だったよ。」
と言ってもらいたかったから。

でも、結果的には朝っぱらから煩わしい思いをさせてしまった。
「さぁ、きゅび。そのまま風呂にいっとれ。
 じいちゃんが今、湯沸かしてやるけん。」
そう言ってでっかい手のひらで、泥だらけの僕の顔をぐいぐいと拭ってくれた。
その時のおじいちゃんの優しさと温かい手の感触は、
30年近く経った今日も、僕はしっかりと覚えている。


                          つづく
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Commented by もも。 at 2006-07-06 01:45 x
すでに、暖かい気持ち満載で(♋д♋)になりそうなんですけどっっwww
続く に期待いたしております。   @キュビノベリスト
Commented by ☆ふーが at 2006-07-06 01:53 x
優しいおじいちゃまですね。 田舎の風景すきです。続き、お待ちしています(⌒-⌒)ニコッ
Commented by きゅび at 2006-07-06 01:53 x
■もも。さん
 はやっ!!
 記事を投稿して、ちょこっと修正してたら既にコメントがついてました。
 電光石火コメント、有り難うございます^^;
Commented by きゅび at 2006-07-06 01:54 x
■ふーがさん
 これまた、はやっ!!
 もも。さんのコメントに驚きの返事をしていたら、更にコメントが・・・!
 電光石火のコメント、重ねて有り難うございます^^;;
Commented by もも。 at 2006-07-06 01:58 x
|∀・)ニヤニヤ  ストーカーですもの♡       (`L_`;;)エッ・・・
Commented by きゅび at 2006-07-06 10:52 x
■再び、もも。さん
 …∑(; ̄□ ̄ ストーカーですか?!
 僕はかまいませんが、オヤジギャグウィルスが伝染しますよ!
Commented by 大阪 ケン at 2006-07-06 11:05 x
きゅびさんの 今を形作る基礎の一部が 解き明かされるようでワクワク・・
Commented by mai at 2006-07-06 19:04 x
おじいちゃんやおばあちゃんのなんとも言えない手のぬくもり。。。私にも覚えがあります。。。
Commented by もも。 at 2006-07-08 00:13 x
それはコマル乂゚д゚)
Commented by アルピニア at 2006-07-08 23:53 x
この記事を読んでいたら、父親の故郷の鹿児島の風景が思い出されました。
何もない田舎で、川でザリガニをつかまえてたっけ。。
こういう忘れかけていた記憶を思い出させるきゅびさんの記事って、やっぱり凄いですね^^ 
Commented by きゅび at 2006-07-09 14:43 x
■大阪ケンさん
 わくわくするほどの過去じゃございませんが、おじいちゃんとの思い出は
 僕にとってはとても忘れがたいことばかりなのです^^
■maiさん
 うんうん。こんな歳になっても憶えてますもん。
 優しい記憶というのは、忘れられませんね^^
■みたび、もも。さん
 既に感染しているかもしれません。時間がある時に一度保健所へ!
Commented by もも。 at 2006-07-10 03:11 x
隔離されちゃったら・・・お見舞いにきてくださいね('I')ジッ
Commented by きゅび at 2006-07-11 06:46 x
■4たび、もも。さん
 安心してください。一緒に隔離されてますから^^
Commented by アストラッド at 2006-07-12 18:53 x
お祖父さまにとっては、お世話を焼くことも楽しかったですよー!きっと^^b
わたしも、歯が痛くて泣いていたら、おばあちゃんが膝枕して頬をなでてくれた記憶があります。不思議と痛みが和らいだんですよね。ぬくもりの力ってすごいですよね^^
Commented by もも。 at 2006-07-13 00:22 x
あぁ。だったら安心ですね(*´艸`)クスクス  ごいっしょに、骨休みしましょう。
Commented by きゅび at 2006-07-13 02:38 x
■アストラッドさん
 ハンドパワーですね!
 でも、実際に痛みに対しては手でさするのが有効な対処療法なんですってね。
 何事も、「愛」ですよね、愛!
■もも。さん
 隔離病棟で骨休みとは、なかなか洒落てますな。
 骨格標本なんかがあったりして、本当に骨が休まりそうですw
Commented by もも。 at 2006-07-15 03:40 x
なんだったら、標本の何本かと、交換しちゃいましょうか∑d(゚∀゚d)オゥイェ!!
トレーディングボーン (`L_,` )フッ (`L_,` )フッ
Commented by きゅび at 2006-07-28 10:41 x
■随分遅れて、もも。さん
 …(´・ω・):;*。':;ブッ あいにく僕の骨は取り外し不可なんですよ^^;
 いや、ももさんの骨もきっとそうでしょ?
by hinemosunorari | 2006-07-06 01:42 | 日々のよしなしごと | Comments(18)

洒落と知性と愛そして無駄の織りなすブルース。


by きゅび
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