FATHER'S SON(1)

僕は36歳。いっぱしのおっさんだ。
趣味はスポーツとトレーニング。
別にマッチョにあこがれてる訳じゃ無い。
でも、スポーツマンの端くれとして腹が出っぱるのは宜しくないと思う。
子どもの頃にあこがれていたヒーローに、でぶっちょは一人もいなかったからだ。

僕はしなやかで、強靭で、スタイリッシュなおっさんになりたいと思ってる。
だから日々の鍛錬は欠かさないし、オヤジギャグもほとんど口にしない。
うん。我ながら、いけてる。

今日もあいにくの天気だったが、スポーツクラブに行って
みっちりとトレーニングをやって、サウナでびしっといい汗をかいた。
で、小雨の降る帰り道。
夜もかなり深くなってしまったので、周囲に人影は無い。

僕のホームタウン駒沢は、かつては閑静な住宅街だった。
ところが今では治安も大分乱れてしまって、
最近じゃガラの悪いヤクザ者が随分幅を利かせていると聞く。
夜道の一人歩きは女性でなくても危険だから控えるようにと
回覧板が回ってきたのは、つい先日の事だ。

「女性でなくても?」
笑ってはいけない。恐怖のオヤジ狩りのことだ。
如何に身体を鍛えているからって、
バカの振り回すナイフや鉄パイプには、かなう訳ないのだ。
不安を抱えて家路を急ぐ僕の前に、見覚えの無い屋台のおでん屋さんが、
忽然と姿を現した。

「あれれ?こんなところにおでん屋さんなんか、あったけ?」
スタイリッシュなおっさんを目指している。
オヤジ狩りは怖い。
けれども、屋台でビールというシチュエーションは物凄く魅力的だ。
ハードなトレーニングの後の一杯というのは、とりわけ格別なものがある。

うーん、うーん、と思案している折も折り、雨足がだんだん強くなった。
「雨宿りがてら、ちょっと寄っていくのも悪くないよね。」
自分を正当化するように独り言をこぼし、スルリと屋台の暖簾をくぐった。

「こんばんはー。小降りになるまで、一杯いいですか?」
客は、誰一人いない。
おでん鍋の向こう側、ブヨブヨのデブで、ちんちくりんのチビで、
ヨレヨレのバーコードハゲのおっちゃんが、僕を見据える。

「いらっしゃい。待ってたんだよ。」
「?」
変な事をぬかすジジイだ。
「いや、僕、今日はじめてきたんだけどね。
 とりあえず、ビール一杯ちょうだい。」

ヨレヨレのオヤジは薄汚れた前掛けをほどきながら続けた。
「はじめてだって? いいや、それは違う。
 私はずっと、君を待っていたんだ。
 これは、私と君との約束・・・いや、契約なのだよ。
 だから、私は何十年もこの時を待ち続けたのだ。」
「あ?何言ってんだ、おっさん?
 どこか悪いなら通りの反対側に病院があるから、連れて行ってやろうか?」 

夜の深い闇と強い雨の煙で、周囲は何も見えないし、聞こえない。
まさか。
やばい。
これが新手のオヤジ狩りだったらどうしよう?
ヘボイおっさん相手だから、痛めつけられる事はなさそうだが、
あまりにも薄気味悪くて夜も寝られない。
大体、オヤジ狩りってのは若いチンピラ共が、
オヤジを寄ってたかって叩きのめすんじゃないのか?
オヤジによるオヤジ狩りなんて聞いた事ねぇぞ。

いずれにしたって、こんな薄気味悪いおっさんと、
二人きりで屋台にいなきゃならない義理は無い。
「おっさん、すまねぇ。気が変わった。
 今度また来るわ。」
そういって椅子を蹴飛ばして、振り返りざま逃げ出そうとした矢先、
僕は信じられない光景をまのあたりにした。

なんと、くぐり抜けようとした暖簾の向こう側には、ほどいた前掛けを握った、
ブヨブヨのデブで、ちんちくりんのチビで、ヨレヨレのバーコードハゲの・・・
つまり、僕の背後にいるべき屋台のおっさんが、
真っ直ぐに僕を見下ろしていた。
 
目の前のおっさんと、背後のおっさんが笑いもせずに同時に言う。
「私は、ずっと長い間待っていたんだ。
 この雨の降る夜を。
 君の前に再び現れるという、約束を果たす日を。
 さぁ、記憶を取り戻そう。」
笑いながら言われてもきっと恐ろしいだろうけど、
無表情で言われると、なおさら恐い。どうにかなっちまいそうだ。

「さぁ、失った記憶を取り戻そう。」
おっさんは暖簾をくぐって目の前に立った。
見ると目が怪しい光を発している。
その光を浴びているうちに、僕はふわふわと宙を浮くような、
不思議な感覚に襲われた。

「て、てめぇ・・・。
 ど、どうやら、ただのオヤジ狩りじゃねぇな・・・・・。」
残った力を精一杯振り絞って一言いうと、
僕はそのままおっさんの足元に気絶してしまった。

                             つづく








」」」」」当時のコメント」」」」」

osakaken オヤジ狩り・・以前勤務していた会社の同僚の男性でアナタくらいの年齢の人がやられましたよ。ただし・・彼はムチャクチャ・・細い人で
「馬鹿にして!」と怒ってましたが・・体力無いのを悔しがってました。 この話・・気絶から気がついて・・どうなるんでしょう?
2005/09/15 18:29

m⇔k これは きゅびさんの願望なのか…はたまた妄想なのか…
若いべっぴんさんが登場してきたら、願望ね♪(* ̄  ̄)b 
2005/09/15 19:51

きゅび ■osakakenさん
 え?そりゃ、たいへんです!今すぐに筋トレを!!
■m⇔kさん
 若いべっぴんさんの話題は家では禁句ですだ。
2005/09/16 01:06

m⇔k (´・ω・):;*。':;ブッ そうでしたかww
大阪はべっぴんさんが多いでっせ!!(〃∀〃)♪
今度ゆっくり案内しまひょ♪
2005/09/16 17:53

きゅび ■再びm⇔kさん
 大阪のべっぴんさんは、m⇔kさんとほたるさんで十分です。
 最近、リップサービスが上手くなりました。
2005/09/17 00:12

アルピニア ちょっとブログ徘徊をさぼってる間にこんな面白そうなお話が始まってたんですねーー!
早く続きを読みに行こうっとww
2005/09/17 12:38

m⇔k  ズベッ(ノ_ _)ノ リップサービスかい! ( ̄‥ ̄)=3 フン
2005/09/17 20:07

きゅび ■アルピニアさん
 ( ゚∀゚)・∵. ブハッ!! そうなんです。始まっちゃいました。
 どうぞお付き合いくださいませ(*_ _)人
■m⇔kさん
 あ、きっとエライべっぴんさんなんでしょうね。
 ええ。そうですとも。きっと、そうですとも!
2005/09/17 22:41

☆ふーが ドキドキドキドキ・・・・
2005/09/20 20:36
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by hinemosunorari | 2005-09-15 14:28 | 日々のよしなしごと | Comments(0)

洒落と知性と愛そして無駄の織りなすブルース。


by きゅび
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