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冬桜。(四)

冬桜。(四)_b0182613_211997.gif

僕と広さんがともに仕事をしたのは、
プロジェクト発足から最初の約一年間ほどでしかなかった。
その間にさまざまな意見を交し合った。
十ヶ月ほど経って、仕事が順調に軌道に乗りだしたある日のこと。
突然、プロジェクトの方向性が変わることになった。
また、それと同時に広さんのすぐ上に総合顧問という役職が出来、
全く新しい人物が配属された。

上層部でどういう経緯があったのかは全く分からない。
どういう根拠で僕や広さんが作り上げてきたものを台無しにするような判断が下りたのかも
さっぱり分からない。
本当ならば、そんな状況でもきちんと変化に対応して事業全体を進めるのが正しい道なのだと思う。
けれども、その斬って捨てるような冷淡な判断にも納得がいかなければ、
総合顧問が新しく打ち出した方向性も全く的を射ておらず、
プロジェクトに心血を注いできた僕等が決して納得するものではなかった。

若気の至り、と言ってしまえばそれまでだが、
納得できないものは、納得できない。
生まれついての性格だから仕方ない。
僕は、上層部に噛み付いた。
言いたいことは山ほどあったし、新しいプランがどれほど酷いものかを筋道立てて説明できた。
総合顧問という立場の必要性も感じなければ、
その人の言うことが上層部に受け入れられている事が全く理解できなかった。
だから渦中の総合顧問に面と向かって説教のひとつも打ってやるつもりだったのだ。

けれども実際はそうしなかった。
廊下の壁を二、三発蹴飛ばしただけで終わった。
広さんが、すんでのところで間に入ってくれたからだ。

「きゅび、落ち着け。落ち着け。
 俺たちがやってきたことは、絶対に間違いなんかじゃない。
 それは、みんなが分かってることだ。
 お前の言いたいことは、何もかも全部知ってる。
 だから、俺が代わりにきっちり言う。
 それなら、いいだろ。」

そんななことを確かに広さんは言った。
その事自体には何の文句もなかったが、僕は僕で総合顧問に直接何かしらいってやりたかったので
一緒に連れて行ってくれとせがんだ。

「広さん、俺も行くよ。
 広さんは確かに俺の事知ってるけど、今後のこともあるから俺の口からもきちっと筋通させてくれよ。」
「ばか。きゅび。
 お前がいると、まとまる話もまとまらないんだよ。
 いいから、壁でもゴミ箱でも一、二発蹴っ飛ばして、先に帰ってろって。」
そういって、広さんは僕のことを押し返してすぐに総合顧問のところに行ってしまった。

その後、広さんは僕等と顧問の間に度々入って、僕らの話を総合顧問に余すことなく伝えてくれた。
広さんのおかげで、僕はむかつく総合顧問と直接顔をあわせることなく、
また、大して壁もゴミ箱も蹴飛ばすことなく、
自分本来の仕事に集中できた。

けれども、そのことが広さんの立場を危うくしてるなんて、
そのときは全く気づきもしなかった。



                  (つづく、、、とはいえ実はこのまま書き続けます。)

」」」」」当時のコメント」」」」」」

ryoma2005 冬桜、3話読みました。広さん、どうなるのやろ・・・。続きをお願いします。
2005/01/23 01:41

きゅび ■ryomaさん
 遅くまでお疲れ様でした。
 お互いに、気負わずに自分のペースで頑張りましょう^^
 と、言いながら徹夜してしまったσ(・ω・。)。

2005/01/23 08:10

はむねこさん 結局あのあと寝てしまいましたが・・・がんばっておられたのですね^^;
続きを読みに走りますε=ε=ε=(┌  ̄_)┘シュタタタタッ...
・・・
・・・あ、ちなみに私も若いためか良く上司に噛み付いてしまいます(* ̄  ̄)
2005/01/23 10:33

きゅび ■はむねこさん
 アー、これこれ。廊下は走ってはなりませぬぞ^^
2005/01/23 22:30

ririka34 仕事に情熱をそそいで・・かっこいいと思います。
2005/01/24 01:24

きゅび 好きでやっている仕事なので、適当にやっつけることがあまりできず、結果としてブログの内容も九州ラーメンの如く濃いものになってしまいました。<(_ _)>
2005/01/24 13:04

☆やすたん★ 熱い漢だ・・・
2005/01/25 03:44
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by hinemosunorari | 2005-01-23 01:26 | 日々のよしなしごと | Comments(0)

洒落と知性と愛そして無駄の織りなすブルース。


by きゅび
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