きゅびの、ひねもすのらりノウタリン。

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Would you zip me,please?

秘密ってあると思う。
男女の間ならなおのこと。
それは悪い意味だけではなくて、
秘密を抱えること、或いは抱えた秘密を想像することは、
退屈な日々に少しの色を載せてくれるような、
そんな気がするのだ。

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今日はたまたま仕事が早く片付いたので、
早めに帰宅し、夕食のシチューを作っていた。
しばらくするときゅび嫁も仕事先から帰ってきた。
一言二言雑談を交わした後、上着を脱いだワンピース姿の彼女が
キッチンに入ってきて言った。
「ちょっと。
 背中のファスナー、開けてくれる?」

この、異性のファスナーを下ろすというのは、すごく良い。
その瞬間というのは、比類の無いトキメキを感じる瞬間である。
そう思っているのはきっと僕だけではあるまい。
何故ならば、下ろしたファスナーの向こう側にあるのは、
誰も知らない「秘密」なのだから。

ちなみに、言わずもがなの話をさせていただくと、
このジッパーの上げ下げに関する美的なあれこれは、
女性のみを対象とさせていただく。
なぜなら多くの男性用衣服でファスナーがついている部位は
ヒジョーに限られている上に、そのファスナーの向こう側にある秘密には、
全く興味も関心も無いからに他ならない。

それた話を元に戻そう。
背中の髪を大雑把に手でたくし上げて背を向ける。
もはや神々しいと言っても過言ではない美しい姿である。
長いこと連れあった嫁とはいえ、思わずその背に向かい合掌したくなるほどである。
こういうシチュエーションに際し、
鼻糞をほじりながら対応できる男がいたとしたら、
そいつはきっと人類ではあるまい。

彼女の背のジッパーに指をかけたときに、
ふと「秘密」のことを思った。
今思えば、あれは何か予感だったのかもしれない。

「・・・おや?」
と思った。
彼女のワンピースのジッパーをほんの少し下ろしたら、
その向こうに別のジッパーが現れたのだ。
少しの戸惑いと少しの不安は、好奇心には勝てなかった。
ぼくはそっと不審なそのジッパーも注意深く下ろした。

「あ!」
思わず声が出てしまった。
ワンピースの背のジッパーとは別のそれ。
それは彼女の身体の表面についていた。
いや、彼女の表面そのものだった。
それを下ろしてしまったところ、
驚いたことに、中から別の人間が出てきたのだ。

「・・・あ。・・・あ。・・・き、君は!」
「Hi,Kyubi.」
なんと、嫁の中から出てきたのは、
15年前のキャサリン・ゼタ・ジョーンズだった。
「・・・・・・。
 時折見せる神々しいまでの美しさは、
 中に君が入っていたからだったのか!!」
と絶句する僕の狼狽っぷりなどお構いなしに
「Baby,It was me.」
とか意地悪く微笑みながら、
キャサリンは僕にアツい抱擁&チューをするのであった。

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「めでたし、めでたし。」
とうっかり声に出してしまったところで、
「ちょっと!早くしてよ寒いんだから!!」
という嫁の怒り120%の怒号で現実に引きずり戻された。
ことこうなってしまっては、妄想どころか
神々しいまでの美しさとか屁とも思わないという話である。

まるでフルオートメーションの工場で
量産型ギョーザがポコポコ製造されるが如く、
僕は機械的に彼女の背のジッパーをチーッと下ろした。
「あいよ。」
「うむ。さんきゅ。」
彼女は礼を言い終わらぬうちに、「おぉ寒っ」とか言いながら
自室に去って行った。

・・・・・・。
クツクツと煮え始めたシチューをかき混ぜながら、僕は思った。
今夜は出会えなかったが、そう遠くない将来、
きっと彼女の背のジッパーから、
2002年の頃のキャサリン・ゼタ・ジョーンズが出てくるに違いない。
いや、もしかしたら2000年頃のレニー・ゼルウィガーが出てくるのかも。
ともかく、その日を心から待ち望もう、と。



註・これとは別の妄想として20年前のミミ・ロジャース版とか
現在の深田恭子版とか現在の檀れい版他多数のバージョンがあります。
これら妄想をあまり口外すると、家庭にヒビが入りかねませんので、
謹んで「Would you zip me,please?」と題させていただきました。
普通は女性がドレスの背のジッパーを上げてもらう時の言葉です。
が、今回は僕の口のジッパーのことですね。
ははは。
(・・・沈黙。)




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# by hinemosunorari | 2017-01-23 22:19 | 日々のよしなしごと | Comments(3)